2015年9月25日金曜日

「しんがり 山一證券 最後の12人」を読んで


しんがり 山一證券 最後の12人 を読んだ。

山一の事件が起こったのは自分が大学生だったころだと思う。自分の記憶に残っていることは、自主廃業時に野澤社長が記者会見で「社員には責任はありません!悪いのは経営者です!」と号泣しながら叫んだあの記者会見と、「簿外債務」「飛ばし」といった断片のキーワードだけだった。

この本には、山一が自主廃業を決め号泣会見に至るまで、そしてその後の会社の清算業務や不正の調査のチームの奮闘の経緯が非常に臨場感たっぷりに描写されている。読んでいるうちに自分の表面的な記憶の裏側がどんどん繋がっていく面白さがあった。

会社組織は簡単に腐っていく、そして後戻りできなくなる。その中で現れてくる人間の心理と行動模様が読んでいて非常に面白かった。もう自主廃業が確定しているのに、野澤社長がホントのことが周りに言えず、中途半端に情報開示して、その場をやりきろうとする弱さ。自分も野澤社長の立場であればそういう行動をしてしまうのかもしれない。反面教師としてきちんと心に留めておきたい。








2015年7月6日月曜日

グーグルの「悪夢画像」の記事を読んで

この記事を読んで、人工知能(AI)が芸術を生み出す時代の本格的な幕開けだなと思った。Googleが人工知能を応用して、画像を加工し、幻想的な世界観の絵を生み出したという記事。

グーグルの新しい写真アプリで人の顔や動物を認識するのに用いられている人工ニューラルネットワークは画像を特定できるパターンを見つけるものだが、Inceptionismでは逆に、「知っているパターンに近い何か」が少しでも検出されたら、その部分をフィードバックループで繰り返させていくことで、奇妙な悪夢のような世界を生成させた
というのは、なるほど面白い発想で、上手い人工知能の利用の仕方だなー、と感心した。

人間の発想では生まれない「美味しい」レシピを生み出す記事を読んだときにも思ったけれど、人工知能の強みって、人間の常識が通じないレベルの発想が出来る所だと思う。

人工知能に刺激されて、人間自身の発想力や芸術力が鍛えられる時代が来るのだろうか。そんな時代には人間に発想力や芸術力は求められなくなってしまうのかも知れない。その時、人間の存在意義って何になっているんだろう。

2015年5月3日日曜日

アイ・アム 〜世界を変える力〜

「アイ・アム 〜世界を変える力〜」という映画を観た。ライヤー・ライヤーや、ナッティ・プロフェッサーなどを撮ったトム・シャドヤックが作ったドキュメンタリー映画。

世界は何か根本的に間違ってるんじゃないか?そんな疑問から行った様々な精神的指導者へのインタビューをまとめたものだ。

幸福を富と同義に位置付けることにより、幸せになりたければ、物を買って物質的な裕福さを求めるよう人々を誘導するアメリカ式のマーケティング。そしてその結果生み出された、人々を市民ではなく消費者としてみる消費社会。一部の成功者とされる人間が富を独占する社会。今、僕たちはこれを当たり前の事として受容してるけど、ホントにそれが正しいのだろうか?

人間自身の特性を考えたときに、「王国」が向いているのか、「民主主義」が向いているのか?

これらの疑問に、この映画は様々な論点から他者との協調、助け合いこそが人間の本質なんだと。そしてこの格差・貧困の世界が、通常であることと思う事こそが心の病だと主張する。

そして僕たちも心の底ではその主張に同意している。でもその考えが広がらないのはなぜだろう。今とは真逆の考え方だから、それを実現するのは時間がかかるし、難しいんだろう。

でもこれまでの歴史を見れば、社会は黒人公民権運動の例のように古い時代では考えられなかった変革を成し遂げてきた。

それは一人のヒーローの出現ではなく、名もない一人一人の小さな行動によって実現したという。社会の変革もJim Collinsのいうところの「弾み車」なんだと気付かされた。

最後に映画のなかのセリフから。
「神は、他の誰かがいるわけでなく、あなたしかいないと言っている。個人の力が大事なんだ。情熱を持って、『変わることが出来る』と皆に伝えるんだ。」

また観たいと思う、良い映画だったな。

2015年3月16日月曜日

Jim Collinsの"Good to Great"を読んで

Jim Collinsの"Good to Great"を読んだ。
ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則として邦訳もされている。

1965年~1995年にFortune500にランクされた1,435の "良い" 企業のうち、ある時点から市場の平均に比べて業績(*1)が3倍以上よい状態を15年以上維持した11の企業をピックアップし、それらの企業がなぜそのような飛躍を遂げられたのかを調査したものだ。

面白いのは、これらの企業に「共通の特徴」を探るのではなく、これら飛躍を遂げた"Great(偉大)な"企業と、それらと同じ業種、規模、業績だったが、飛躍が遂げられなかった比較対象の"Good(良好)な"企業とで「何が違うのか」を調べている点だ。

また非常にデータに基づいた調査とその結果から書かれており、非常に受け入れやすい。
本の中では、Jim Collinsはこの調査から飛躍の法則を7つの概念に集約し、フレームワーク化して説明しているが、その詳細は本に譲る。

これらの飛躍を遂げたGreatな企業は僕が想像していた
  ・剛腕(敏腕)の経営者
  ・自由な企業文化
というものはなく、
  ・謙虚な、しかし持続的な結果を出すために非常な情熱を傾けるリーダー
  ・自らを律する企業文化
を持つ企業。
剛腕な経営者による、ダイナミックな改革などが行われた企業はどれもGreatにはなれず、Goodな企業(または衰退企業)になっているところが何とも驚きだった。

また、飛躍は外部から見れば、ある日突然ドラマチックに起きたように見えるが、これら実際に飛躍を遂げた企業を内部から見ると、その飛躍を決定づける改革やイノベーションやラッキー等の奇跡の瞬間などがあったわけではなく、ブレークスルーの何年もの前からの「自らが本当に進むべき方向性(*2)」に向かってブレルことなく日々行う小さなアクション積み重ねの結果であったということ。Jim Collinsは弾み車という比喩を使って、うまくこれを描写している。

自らの組織を飛躍させるために必要な本当のことを教えてくれた、最高の本だった。

(*1) 厳密には株式の累積運用成績
(*2) ハリネズミ・コンセプトと本の中では命名している。これ自体非常に重要なコンセプトだが、
   なぜハリネズミか?どう見つけるのか?も含め、詳細は原著に譲る。


2015年2月1日日曜日

黒田如水

吉川英治の黒田如水を読む。

「如水」は黒田官兵衛の出家後の名。ちなみに、福岡藩初代藩主である黒田長政の父親。

リーダーとは、より本質でより大きな視点で進むべき道を考え、それを人に説くことが出来ることなんだと、この本の序盤のエピソードで教えられた。

もともと毛利の陣営であった小寺政職(まさもと)が治める播磨の御着城が、織田信長に攻め入られるかもという時に、評定がどっちが優勢か?それによりどちらにつくかという議論に終始していた中、官兵衛は天下のためにはどちらが天下を治めるべきかの議論を展開した。

経営学者のP.F.ドラッカーの考え方にも「部下の仕事の生産性を高めてあげることが最良のモチベーションを高める方法である」というものが有る。

自分が生き残るために自分の命を懸けるのではなく、より天下を良くするために自分の命を懸けるほうが絶対にモチベーションが上がる。

リーダーは、より大きな視点で正しい道を示せばよい。こんな簡単に思えることでも普段できていない自分に反省。